ネットワークが普及しパソコンもネット時代に向いたモデルが店頭に並んでいます。シニアにとってインターネットは老化を遅らせる1つの特効薬です。しかし、パソコンが遅くてイライラするようでは眠気を誘うばかりです。ここでは、パソコンやネットの性能をチェックする方法を挙げてみました。少しでも快適なパソコン環境に改善してみてはいかがでしょうか。(2020年夏)
パソコンの心臓部であるプロセッサの種類は次のようにして調べます。
(1)エクスプローラを開く
(2)左ペインのPCの文字の上で右クリックする
(3)表示されたウィンドウでプロパティをクリックする
次のような画面が開き、赤枠で示す部分にパソコンの心臓部の種類を示しています。(この画面は Windowsキーを押しながらPause/Breakキーを押して開くこともできます)
図1 プロセッサの種類
この例ではIntelというメーカーのCore i5という名称のプロセッサが使われていることが分かります。プロセッサには次のような種類があり右の方にいくほど高性能です。価格も高くなります。
メーカー: Intel
Celeron Pentium Core i3 Core i5 Core i7 Core i9 ...
メーカー: AMD
A Athlon Ryzen3 Ryzen5 Ryzen7 Ryzen9 ...
インターネットを利用するのが主な用途ならPentiumやAthlon以上を、動画編集をするならCore i7やRyzen7以上を搭載したパソコンが必要とされます。
パソコンの動きを工場での作業にあてはめると、プロセッサが作業者に、実装メモリーは作業台に当たります。効率の良い作業者は手さばきが良く仕事が速いですが、作業台が狭いと効率が落ちてしまいます。次の画像は図1と同じですが、プロセッサの下に実装メモリーのサイズが表示されています。
図2 実装メモリーサイズ
この例では4.00 GBになっています。パソコンによって次のように表示されるかもしれません。数値が大きいほど作業台が広く効率よく作業できまが、価格も高くなります。
2.00 GB 4.00 GB 8.00 GB 16.00 GB ...
インターネットでアクセスするWebページが複雑になってきたいま、4.00 GBでもよいが、8.00 GBは欲しい...とされます。
たいていのパソコンは2枚のメモリーカードを実装できるようになっています。もし、空きのスロットがあれば同じメモリーカードを購入して「実装メモリー」のサイズを倍にすることができます。空きがないときは、たとえば4 GBのメモリーカードを2枚購入して8 GBとします。ただし、次項で説明するストレージをSSDに変更するのに比べて、実装メモリーの増設の効果は実感しづらいものです。
最大メモリーサイズはコンピューターで決まっています。増設の際にはパソコンの仕様を確かめましょう。
パソコンの電源を入れたとき立ち上がるように設定されているソフトを見直すのもパソコンを快適にする1つです。無駄なソフトを立ち上げると、その分、実装メモリーの空きを少なくし作業台が狭くなります。
タスクバーを右クリックして「タスクマネージャー」を立ち上げます。簡易表示になっているときは左下の「詳細」をクリックすると次のような画面が開きます。
図3 タスクマネージャーの「スタートアップ」
① 「スタートアップ」タブをクリックします
② 状態が「有効」になっているアプリに注目します
③ 起動時に立ち上げる必要がないソフトなら「有効」の文字の上で右クリックし開いたウィンドウで「無効」をクリックします。
これでパソコンの電源を入れたとき「無効」にしたソフトは立ち上がらなくなり、立上げ時間の短縮とメモリーの浪費を防げます。
でも、どのソフトが必要なのか、どれを無効にして良いか迷います。起動時に立ち上げる必要のあるソフトは、次のような目安で判断しましょう。あくまでも自己責任ですよ。
上の目安から外れるソフトは「無効」にして、パソコンを再起動して支障がないか確認しておきましょう。支障があるようなら「有効」にもどしておきます。
Windows 10になってからインターネットを介してプログラムの更新や機能の追加が行われるようになりました。この仕組みをWindows Updateと呼び、小さな更新は月1回、大きな機能追加などは年2回行われるようになりました。この更新の様子はスタートボタンをクリックし電源の上にある歯車のアイコン(設定)をクリックして開いた画面で「更新とセキュリティ」で確認できます。
図4 Windows Update
① この部分に「プログラムは最新です」と表示されていればパソコンは健康です。図4のように「利用可能な更新プログラム」と表示されていたり「ダウンロード中」「インストール中」と表示されていれば更新が進行中です。②のように「ダウンロード」ボタンがあればクリックしてダウンロードに進みます。「再起動」ボタンがあればクリックしてパソコンを再起動します。
パソコンを使わない時間帯ではダウンロードや再起動は自動的に始まります。
「プログラムは最新です」と表示していないときにパソコンを使おうとすると、Windows Updateが並行して進みパソコンが思ったように動いてくれません。このようなときは、更新をまず終わらせるようにしょう。
更新の途中でパソコンがスリープ状態になると更新作業が中断されます。設定/システム/電源とスリープ でスリープを「なし」に設定しておきましょう。
Windows 10の更新の状態をバージョンで示します。パソコンの更新の状態などからバージョンは自動的に進んでいきます。手動で進めることができても自動で更新されるのを待つ方が無難です。
ストレージ(貯蔵庫)とはソフトやデータを保存する場所のことです。これまではハードディスクが主流でしたが最近はSSD(Solid State Drive)と呼ぶ半導体記憶装置が安価になったこともあり普及してきました。ハードディスクは書込み・読出しの動作に機械運動を伴いデータ速度を上げられません。一方、SSDには機械部分がなく半導体の速度でデータにアクセスでき、したがって高速です。(SSDは高速ですが容量が大きくなると高価です。大容量のストレージではハードディイスクが使われます。)
これまでのパソコンのハードディスクをSATAタイプのSSDに差し換えるとパソコンの速度は著しく改善されます。最近のパソコンにはPCIeタイプの、さらに高速なSSDが搭載されています。
速度を測定してみよう
ストレージの読み書きスピードを測定するソフト(CrystalDiskMark)でストレージの性能を調べることができます。次のリンクをクリックしてインストールして開き、左上隅のALLをクリックすると測定が始まります。
ハードディスク、SATAタイプSSD、PCIeタイプSSDを測定したものが図5~図7です。左の列はテストに用いるデータの違いを、右の2列は読出しと書込みのテスト結果を示しています。数値が大きいほど高速であることを示します。上の2行は連続データ、下の2行はランダムデータによるテスト結果です。
図5 ハードディスクの測定例
図6 SATAタイプSSDの測定例
図7 PCIeタイプSSDの測定例
図5のハードディスクでは連続データの読出し速度は74.85 MB/s・書込み速度は70.64 MB/sでした。そのハードディスクをSATAタイプのSSDに換装すると、図6のように読出し速度は523.7 MB/s・書込み速度は467.0 MB/sに改善されました。それぞれ6.9倍/6.6倍です。
最近のPCIeタイプSSDを搭載したパソコンでは図7のように読出し速度は2194.87 MB/s・書込み速度は966.59 MB/sでした。図5のハードディスクと比べるとそれぞれ29.3倍/13.7倍です。
ハードディスクをPCIeタイプのSSDに差し換えることは、コネクターの形状が異なるためできません。
ストレージの速度が速くなるとパソコンのサクサク感が飛躍的に高まり、立ち上がり時間が極端に短くなり、Windows Updateにかかる時間も短くなります。プロセッサがある程度高速ならSSD化を検討しましょう。
図8 有線接続時のインターネット回線速度
次に、LANケーブルを抜き、WiFi接続にして測ってみました。
図9 無線接続時のインターネット回線速度
WiFi接続はパソコンを宅内で移動でき便利ですが、有線接続の20%程の速度にまで落ちてしまいます。WiFiルーターとパソコンが近ければLANケーブルで接続したほうが高速です。
図7、図8は光ケーブル回線での測定例でしたが、ケーブルテレビのインターネット接続サービスでは次のような測定例もあります。
パソコンを買い替えようと考えたとき、価格で選ぶのは危険です。まず、これまでのパソコンの使い方を振り返ってみましょう。
(1)エクスプローラを開く
(2)左ペインのPCの文字の上でダブルクリックする
次のような画面が開きます。
図11 ストレージの使用量
図11にはストレージ(この場合はハードディスク)の容量と空き容量を表示しています。ローカルディスク(C)は容量が234 GBで空き容量が183 GBです。つまり、51 GBを使用しています。ボリューム(D)は容量が230 GBで空き容量も同じです。このパソコンには500 GBのハードディスクが搭載されていて2つの区分に分けて使用するようになっています。500 GBのうち51 GBを使用しているにすぎません。このような状況でどんなパソコンを購入するか考えてみましょう。
(1)ストレージ容量は身の丈に合わせて
これまでの使用量が100 GB以下なら、250 GB程度のSSD搭載機で十分です。1テラバイト(1000 GB)の大きいサイズを買っておけば将来に役立つ…という考えは止めましょう。ストレージの容量は小さいほど、特にSSD搭載のパソコンの価格は下がります。
(2)SSD搭載機を選ぼう
ストレージはSSDを選びましょう。しかもSATAタイプのSSDではなく、PCIeタイプのSSD搭載機を選びましょう。SSDとハードディスクを組み合わせて容量を大きくしたパソコンを見かけますが、それほど大きな容量がいらなければSSDだけのモデルを選びましょう。
(3)光学ドライブは必要?
光学ドライブとはBluRayディスクやDVDディスク、CDを読み書きする装置のことです。昔はソフトウエアをDVDで購入していましたが、今ではインターネットからダウンロードして購入する時代です。映画などはテレビの環境で鑑賞できるでしょうから、光学ドライブがついてないモデルを探してみましょう。その方が当然安く買え、重さも軽くなります。
(4)メモリーは8 GB
新しくパソコンを購入するならメモリーは8 GBを搭載したモデルを選びましょう。
(5)Officeは必要か?
マイクロソフトOfficeを搭載しないパソコンはその分安く買えます。Officeにはワードやエクセルが入っています。これからそれらは必要でしょうか?同じような機能のアプリとしてはGoogleドキュメントやGoogleスプレッドシートが使えます。パソコンで作成したファイルを、即座にスマホでも利用できるGoogle系のアプリは便利です。
これまでメールの送受信のためにOfficeメンバーのアウトルックを使っていた場合も、お使いのメールプロバイダーがWebメールサービスを提供していればアウトルックを使わずにメールの送受信ができます。エッジやクロムといったブラウザーさえあればWebメールにアクセスできます。ブラウザーはパソコンを買えば必ず入っています。
(6)プロセッサは?
最後になりましたがプロセッサはコアi5かコアi3でしょうか。コアi5の方が若干高価格になりますが、予算と相談して決めましょう。ビデオの編集をすることがあればコアi7でしょうか。
(7)大きな画面が欲しい
文字を大きくしたいから…デスクトップタイプのパソコンを選びますか?パソコン自体は小さく・軽く持ち運びしやすいノートタイプを買っておき、モニターを別途購入する方法があります。パソコンとはHDMIケーブルで接続します。
図12 パソコンの文字が小さい…モニターを使おう
頭に描くパソコンは、店頭では見つからないかもしれません。店頭には販売店が利益になるモデルが並べてあるのは当然です。アマゾンやパソコンメーカーのWebページを探して、インターネットで購入することになるかもしれません。
ハードディスクがSSDになり、さらに光学ドライブがなくなれば、パソコンが軽くなり持ち運びが楽になります。移動先ではフリーWiFiやスマホのテザリングでインターネットに接続でき、新しいパソコンライフが始まります。